ある夏の日、
木漏れ日の下で本を読む彼女と出会った。
夏の木漏れ日、雨の教会、
水面から差す光のような淡い月明かり。
その全てが、確かにそこにあったはずなのに
今思い出せるのは、
どこか曖昧な輪郭とその香りだけ。
彼女が何を話していたのか、
どんな表情で笑っていたのか、
思い出そうとするほど、
記憶はゆっくりほどけていく。
ただひとつ確かなのは、
その時間が確かに"存在していた"ということ。
これは、香りによって呼び起こされる
ひとつの追憶の物語。
それが誰の記憶なのかは、
まだ、わからない。
「香りってさ、記憶とリンクしてる気がするんだ」